星野睦郎

「日本人の心と論語」

星野睦郎講師


――論語の「学而篇」に「学而時習之、不亦説可乎、有朋自遠方来、不亦楽乎」(学びて時にこれを習う、亦説ばしからずや。朋あり、遠方より来たる、亦楽しからずや)とあります。
 今、私も論語を勉強していますが、本当に面白いですね。
 論語を読みますと、次から次へと「心の栄養」になるような言葉が出てきます。
 今日の講演に当たって、論語に関する本をいくつも読んでみたんですが、その中で、佐藤一斎の『言志四録』に出会いました。
 ぜひお読みになることをお勧めします。
 それから新井正明さんの『安岡正篤先生に学んだ私の人生』(致知出版社)。うちの会社の取締役と字は違いますが同じ名前なんです(笑)。
 この本もお勧めします。
 そして加地伸行さんの『論語』(講談社)。最初に読んだ時は「重いなぁ」と感じたんですが、読んでいるうちに、面白さがわかってきた。
 このように、たくさんの論語に関する本を読んでいくうちに、自分にあった論語の本がでてくるんですね。
 これからも論語に関する本を読み続けようと思います。
 それだけ論語は、置くが深くて、味がある。論語というのは、どのページから入って行ってもいいんですよね。
 論語を学ぶということは、人の道を学ぶことです。いろんな意味で、いかに自分が間違っていたかという事を知って反省するわけです。
 それから竹内均さんの『渋沢栄一「論語」の読み方』(三笠書房)。これも大変素晴らしい本です。
 日本論語研究会でも、いろんな形で渋沢栄一の生涯が取り上げられますが、近代日本資本主義の父であります。
 その渋沢栄一の精神的支柱だったのが論語ですね。「道徳経済合一論」を理念に計り知れない足跡を遺した。
 こうしたことがなぜ今の日本では忘れられてしまったのか。
 私は「今こそ日本人は、自分の国の素晴らしさ追求し、そして論語を学んで、日本人としての精神文化を固める必要があるんじゃないか」と思います。

 日本はこれまで、いくつもいくつも壁にぶち辺りながらも、それを見事に乗り越えてきました。
 ところが今の日本人は、自ら殻に閉じこもって、羽ばたくことができない。これが現代の日本人の姿です。
 先ほど申し上げた新井正明さんは、昭和14年(1939年)、日本軍とソ連軍との間で勃発したノモンハン事件で、陸軍に一兵卒として参戦して、右足を失った。
 その新井さんは、安岡正篤先生を師として仰ぎ、論語を学んで、戦後、関西財界の重鎮として、住友生命保険を業界8位から3位にした。
 そういう立派な方がかつての日本にはいたんですね。
 泰伯篇に「君子篤於親、則民興於仁、故舊不遺、則民不偸」(君子親に篤ければ則ち民仁に興り、故旧遺れざれば則ち民偸からず)とあります。
 上下一体ということでありまして、上に立つ者が肉親に対した情愛が細やかであれば、下の者もそれに倣う。そして下の者も人情にあつくなるということです。
 私は、今の日本には、国を引っ張っていく本当の意味でのリーダーが必要だと思います。――

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「日本人のこころと論語」(PDF:458KB)


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